2010年12月28日
カーペットの破損は、敷金から引かれる!?
さて、いくら補修費用を負担すべきなのでしょうか?
と、いうお話をする前に、国土交通相の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方を復習しておきましょう。
原状回復の定義と負担区分
ガイドラインでは、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を越えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。
図に示すと、次のようになります。
簡単に言ってしまうと、借りている人が普通に住んでいたら古くなったりぼろくなったりする点については「経年変化」もしくは「通常損耗」として考えますよ。ということです。これらは、貸主(大家さん)が負担するべきと考えられます。
借主(入居者)が負担すべきなのは、故意や過失、善管注意義務違反(社会通念上、要求される注意義務を欠いた)などにより、毀損・損耗してしまった場合に限られます。
すると、カーペットのシミ(たとえばコーヒーをこぼしたり、タバコの火で焦がしたなど)は、借主(入居者)負担ということになります。
しかし……。
経過年数と借主の負担割合
借主が経過年数1年で毀損させた場合と経過年数10年で毀損させた場合を比較すると、後者の場合は前者に比べて、より大きな経年変化・通常損耗があるといえます。
そこで、借主の負担については、建物や設備等の経過年数を考慮して、「年数が多いほど負担割合が減少する」と、ガイドラインでは考えています。
具体的には、たとえばカーペットの場合、上のグラフのように6年で残存価値が10%になるような直線(場合によっては曲線)を描いて、経過年数によって借主の負担を軽減していきます。
では、冒頭のケースではどう考えればいいでしょうか?
仮にかなりひどいカーペットの毀損であった場合、借主にカーペットの張替え義務が生じると考えられます。その張替え費用が2万円だったとすると……。
2万円☓10%=2000円の費用負担をすべきだ、ということになります。
つまり、敷金からまるまるカーペット代を差し引かれるのではなく、通常損耗を計算に入れた額を差し引かれるのが妥当というわけです。
借主の負担対象範囲
また、原状回復は既存部分の復旧と考えられます。
そのため、可能なかぎり既存部分に限定した補修代金に限って、借主の負担を考慮します。つまり、借主に原状回復義務がある場合の費用を算出するにあたっては、補修工事が最低限可能な施工単位に基づいて、補修費用を考えます。
つまり、畳や襖であれば、1枚単位で考えます。
フローリングは原則平米単位です(ケースバイケースですので断言はできませんが、リフォーム見積もりでも平米単位となります)。
クロスは平米単位が望ましいものの、借主が毀損させた箇所を含む一面分までの張替え費用を借主負担とすることが妥当と考えられています(ただし、この場合でも経過年数による負担割合を考慮します)。
このように、国土交通省の「ガイドライン」では、借主側の負担をはっきりと示しています。
もちろん、不注意など自分の責任で破損してしまった建物・設備の補修代金は負担しなければいけませんが、あまりにも負担の範囲が広いと感じたら、「ガイドライン」を参照してみるのもいいと思います。
●国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、こちらからダウンロードできます
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この記事へのコメント
今回の記事も大変勉強になります。
敷金の追加請求がある場合は
契約会社や大家さんに
どういった理由でどこを修繕したのかなど
問い合わせたら教えて頂けるのでしょうか?
先日、友人が引っ越しの際に
追加請求を受けてあまりの高さに驚き
後々裁判まで発展した事があるんです。
入居前に気をつけた方が良い事とかありますか?
例えば、立ち会ってもらって写真を撮った方が
いいとか。
僕の場合は、マンションの一室を借りる予定なのでそこが凄く気になってしまいます。
とま~りんさん、おはようございます。
退去の際にどこを補修したかは、明細をもらえます。明細には修理の理由は書いていないと思いますので、そこは口頭で尋ねることになる場合が多いはずです。
ただ、最近はそこまでぼったくりな大家さん・業者さんはめったにいないです。消費者意識の高まりや、情報の共有化(国土交通相や県の建築指導課など)によって、消費者の意識が高まっていることが、その背景にあると考えられます。
入居前にも、チェックシートを見ながら入居者さんと業者さんがいっしょに室内をチェックするハズです。「床のこの部分には最初から傷がありますね」とか、そんな感じで、室内を一緒に見て回ります。どうしても気になる場合は、この時に写真を撮らせてもらうことも可能だと思います(実際には、担当業者さんに相談を…)。
入居時にきっちりすり合わせをしておき、入居者が責任を問われるような使い方をした部分はどこか、というのを最終的に特定できるようにしておけば、トラブルは減少すると思われます。
万が一トラブルになった場合、なりそうな場合は、不動産業者の団体である、宅地建物取引業協会の窓口で相談できますよ。裁判より安く解決できる場合も多いです。
早速の返答ありがとうございます。
相談窓口もきちんとあるんですね。
それを聞いて安心しました。
引っ越しなどには大きなお金も絡んでくるので
トラブルがない事にこしたことないですが
知識として心構えができると
ココロに余裕が生まれます。
ファイナンシャルハウスさんに出会えて
本当に良かったと思っています。
近々、不動産の事で伺いたいと思いますので
よろしくお願いします。
整体院 たなごころ 代表 前泊 悟
とまーりんさん、こんにちは。
不動産のご相談に来られたときに、肩こりの相談に乗ってもらえると嬉しいです!
それはさておき、宅建協会の連絡先はこちらです。
社団法人沖縄県宅地建物取引業協会
〒900-0021 沖縄県那覇市泉崎1-12-7
TEL 098-861-3402
ユーザーさんのための、無料相談窓口がありますよ。
ただ、こちらのお世話になることは、かなり稀だと思います。とくに、一定の知識があればトラブルも未然に防げると思いますので、まずは情報収集をしておくのがよいと思います。